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第八回 政宗VS兼続・第一ラウンド


前回、伊達政宗の居城に攻め入ろうとした兼続と景勝(というか兼続のみ)
だったが、突如招集がかかり、江戸城へと出かける事になった。

…ということで、江戸城内。


兼続「突然呼び出すなんて一体何様のつもりなんでしょうね、あの狸オヤジ。
   用があるなら、自分から来いって感じですよ」

景勝「…家康殿の事も嫌いなのか、与六?」

兼続「別に嫌いじゃないですよ?ただ、隙あらば火縄銃で撃ったり、煮たり、
   焼いたり、食ったり、木の葉でちょいと隠したりしたいとは思ってます」

景勝「こ、恐ッ!っていうか、童謡から言葉引用するのが好きだな、お前!」

兼続「何の事だかさっぱり分かりませんね(棒読み)」

景勝「いや、何故そこでシラをきる!?明かに事実じゃん!
   この時も使ってたけど、乱用すると著作権が何とかで訴えられるぞ!?」

兼続「その際は、僕の君主も責任をとって辞任するから大丈夫です」

景勝「イコール『俺』じゃん!一体何から辞任するんだよ俺は!?」

兼続「『人間』…ですかね」

景勝「せめて『君主の座』ぐらいにしてくれ!罰が重すぎるよ!」

兼続「…残念ながら、僕にはどうする事もできません」

景勝「ちょっと待て!こんな所で『秘儀・白い●塔ごっこ』を発動するな!」

兼続「確実に待ち受けているであろう転落人生を、頑張って歩んで下さい」

景勝「頑張れないから『転落人生』って言うんだろ!っていうか推奨するなよ!」

兼続「大変言いにくいです事が、景勝殿はすでに『転落コース』に迷い込んでます」

景勝「マジで!?もう手遅れ!?」

兼続「しかも、原因はこの僕」

景勝「自覚ありかよ、凶悪確信犯!最上級にタチが悪いな!」

兼続「…ふ〜ん。そんな事言っていいんですか、景勝殿?」

景勝「な、何で?」

兼続「ここは江戸城だから、いろんな大名やら武士がウロウロしてますよ?」

景勝「え?…あッ!……………。」(←突然黙り込む)

兼続「人生のテーマとして『無口なハードボイルド』を掲げてるんでしょ、景勝殿。
   他人の城内にいる時くらい、眉間に皺よせて黙ってて下さい」

景勝「……………。」(←思い出したかのように眉間に皺よせる)

兼続「おや?廊下の奥に人影が…」

景勝「……………。」(←眉間の皺維持に必死)

兼続「あれ?もしかして、あれは………」

景勝「……………。」(←少しキツくなってきた)


ほぼ同時刻、江戸城内。

政宗「ふふ〜ん。見てくれよ片倉さん、この新しい眼帯をよぉ〜。
   俺の為だけに生まれてきたとしか思えぬほど、この肌にフィットしてるよな〜。
   加えて、吸いこまれそうなこの色!まるで漆黒のダイヤのようだろ〜?
   正直に言ってくれてもいいんだぜ?『カッコイイです』ってよぉ〜」

片倉「…なんか、ゴキブリみたいですね」

政宗「なッ!?なッ、なッ、なッ!?」

片倉「どれ、ちょっと見せて下さい。
   ……近くで見るとまさにゴキブリ、むしろ瓜ふたつですね。」

政宗「……………。」(←相当ショックだった御様子。半分放心状態)

片倉「おや?廊下の向こう側に人影が…」

政宗「ん…?…あいつらは……


兼続「…伊達政宗……ですねぇ(ニヤリ)」

景勝「……いきなり殴りかかったりするなよ、与六(小声)」

兼続「大丈夫です。そんな事をするほど僕は無礼ではありませんよ。
   景勝殿は口を“への字”にして黙ってて下さい」

景勝
「……………。」(←『ハードボイルド』準備万端)


政宗「上杉景勝と……その隣の…誰だっけ、アレ?」

片倉「軍師の直江兼続殿ですな。そのぐらい覚えて下さい」

政宗「あぁ!アイツかッ!!会った事も無いのに俺の事、目の仇してるっていう!
   きっとよぉ〜、俺のカッコ良さにシットしてるんだぜ〜?
   『伊達政宗は男前だし、頭も良いし、戦も強くて悔しー!』ってなぁ〜。
   まッ、それもこれもどれも真実だから仕方ないけど。俺様才能の泉ッ!」

片倉「(無視)こちらに近付いてきますよ。どうします?」

政宗「あ〜ん?俺のようなスペシャルな人間は、堂々と歩きゃ良いんだよ。
   そうすりゃ、向こうが道譲るだろ〜。何故かって?ソレは俺が美しいから…。
   万が一、斬りかかられても、斬り返せば良いしなぁ〜。
   知ってるか?俺、剣術も得意なんだぜ〜?神に選ばれし人間ってやつ?」

片倉「(無視)もう目の前です」

政宗「よっしゃ〜、俺の美しさを存分に味合わせてやるか」


兼続「………」

政宗「………」

兼続「…………」

政宗「…………」

兼続「……………」

政宗「……………」

兼続「………………」

政宗「
ちょっと待て、コラァッ!!!!!

兼続「…何ですか?」

政宗「俺がいるのに、なに無視して通りすぎてんだよ!斬るなり撃つなり殴るなり
   なんかやれよ、なんでも良いから!無視はないだろ、無視は!!」

兼続「はぁ?」

政宗「っていうか、普通なら挨拶するだろ!」

兼続「挨拶ぅ?」

政宗「アンタはただの陪臣で!俺は天下の伊達政宗!挨拶ぐらいしろよ!?」

兼続「あぁ、あなたが噂の伊達政宗様なんですか」

政宗「え?」

兼続「いやいや、そうとは知らず、まことに申し訳ありません。
   長年戦場ではお目にかかっておりましたが
   
いつも後ろ姿ばかりで正面から見るのは今日が初めてでしてね。
   
全く気がつきませんでしたよ

政宗「
なッ!?なッ、なッ、なッ!?」

景勝『……あーあ、凄いこと言っちゃったよ……(心の声)』

兼続「本当に申し訳ありませんねぇ。僕は田舎者なんで許してやって下さい。
   それでは、これで失礼致します。
ごきげんよう

政宗「……………。」(←相当ショックだった御様子。完全放心状態)


兼続「ふふふ、なかなか面白かったですねぇ(満足げ)」

景勝「また、いらん敵を増やしてしまった…」

兼続「今の一言で、伊達政宗の心に一生消えないキズが付きましたね。
   この調子で、これからも定期的に、伊達政宗の心を折っていきましょうか」

景勝「いや、やめろよ!かわいそうだろ、ピンポイント攻撃は!」

兼続「知ってますか、景勝殿?こういう事件の時、被害者側より加害者側が
   遥かにつらい思いをしている、って事も多いんですよ?」

景勝「今のケースは、被害者側が一方的につらい思いをしてるだろ!
   自分に都合良いように解釈するなよ!政宗殿、魂抜けてたぞ!?」

兼続「長く生きてりゃ、そのくらいの事、日常茶飯事ですよ」

景勝「そうなの!?」

兼続「むしろ『俺の魂、一日一回必ず抜けちゃうんだよねペース』です」

景勝「そんなに!?っていうか、それ誰のペース!?」

兼続「無造作に選出された日本の成人男性千人の平均です」

景勝「平均でそれ!?頻繁に魂出入りしすぎ!今に滅びるぞ、日本人!」

兼続「ちなみに、景勝殿は一日に最高四十七回抜けた事があります、魂」

景勝「十割お前のせいだよ!俺、ストレス発電所!」

兼続「でも、最近はほとんど抜けてませんね。全く…つまらない男ですよ」

景勝「つまらないとか言うなよ!どちらかと言うと誇らしい事だよ!」

兼続「どうやら、ストレスに対する抵抗力が高まっているのが原因のようです。
   これからは、さらに過度のストレスを景勝殿に与えなければなりません」

景勝「なんでそこで使命感に燃えるの!?」

兼続「何だか楽しくなってきましたね〜♪
   次回から今までセーブしていた腹黒リミッターを、少し解除したいと思います。
   それでは、皆さん、今回はこの辺で」

景勝「ちょ、ちょっと待て!終わるな!与六の最後の言葉に対して反論させ…」

語り:直江兼続&上杉景勝(強制終了)


  モドル